1966.11.04 Friday
金魚を食べないで
すっかり秋めいてきましたが、この時期まだ蚊に悩まされているところがあるそうです。
「冬のカ 悩む世田谷、三鷹 浄化そう(簡易水洗)が温床に」
(読売新聞昭和41年11月4日朝刊1面)
「そろそろコタツの恋しくなる季節だが、世田谷区や三鷹市で、いまだにカに悩まされている地区がある。"犯人"は低温に強い「チカイエカ」。ひところ都心のビル街に大発生したやつだが、ここ数年簡易水洗便所の浄化そうを絶好の発生源として周辺地区でもブンブンとびはじめた。夏のカと同じように人を刺すうえ、これを恨絶しようとして浄化そうに薬をまけば、薬の影響で浄化機能が低下してしまい、退治のキメ手がない。都衛生局でもその対策には頭を痛めている。(中略)
このカは「チカイエカ」といって、夏にふつうに見られる「アカイエカ」の亜種で、アカイエカに似ているがやや大ぶり。戦争中はじめて東大構内で発見された。普通のカは気温が十六度以上になると活動するが、チカイエカは十度くらいでも吸血作用をする。」
世田谷区の赤堤や三鷹市の下連雀などでは、コタツにあたりながら蚊取り線香をたいたり、蚊帳をつっているそうな。季節感もなにもありませんです。
新聞斜め読み
「米ソ核独占に痛撃 「人民日報」中国核実験で論説 帝国主義に吉日はない」
(朝日新聞昭和41年11月4日朝刊3面)
「【ANS=東京】北京三日発新華社電によると、中国共産党機関紙「人民日報」は「ジョンソン、大きな不運に見舞われる」と題する次のような評論員の論文を掲載した。
一、中国のミサイル核兵器の発射実験の成功は、米ソ両核独占王に痛棒をくらわせ、かれらは打撃に気も転倒し、あっけにとられている。
一、ジョンソン大統領は、中国は「未開発世界」の「一部分」であり、中国は貧乏であり、核兵器を持つべきでなく、中国が核兵器を持つことは「かなしむべき」である、とのべた。世界人民は、中国というかつては帝国主義の眼中になかった貧しい、おくれた国家が、ひとたび徹底した解放をかちとれば、生活をよくすることができたばかりでなく、原子爆弾、ミサイルもつくることができ、科学技術の領域で世界の高峰に登り、西側の大国に追いつき、追越すことができることをはっきりと見てとっている。
一、ジョンソン大統領はまた、中国がミサイルと核兵器を持つことは「中国自体に危険を招く」、なぜなら米国は中国を「封じこめる」ことができるからである、とのべた。中国人民はアワと小銃しか持たなかった時代にも、米帝国主義を恐れはしなかったし、いまや中国人民みずからがミサイルと核兵器をにぎったのに、恐れることがあるだろうか。
一、ジョンソン大統例は、中国のミサイル核兵器の実験は、核拡散防止条約の調印に「大いに困難をふやした」と述べた。これは、まんざらあたっていなくもない。現在、米帝国主義とソ連修正主義指導部は、やっきとなって核拡散の取引を大いにすすめ、かれらの核独占の地位をかためようとしている。中国のミサイル核兵器発射実験の成功は、まさにこの両者の悪者に致命的な打撃を与えた。
一、ジョンソン大統領がアジアに来るさいに、米国務省は、かれのために暦を調べ、吉日を選んだ。思いもよらず、かれがアジアを「訪問」している途中で、中国のミサイル核兵器の発射にぶつかった。このことは、見たところ偶然の一致のようであるが、象徴的な意義を持っている。それは、われわれの時代には、帝国主義にとつていかなる黄道吉日もないということを明らかにしている。」
核ミサイル実験成功で意気上がる中共様の有難くも威勢のよいお言葉。『黄道吉日』なんて陰陽道の用語を使っているところが目を惹きます。占星術ならともかく、ジョンソン大統領が陰陽道に通じているとは思えませんが。
「毛主席退場で中止 北京の紅衛兵大集会」
(朝日新聞昭和41年11月4日朝刊3面)
「【北京=野上特派員三日発】三日北京で行われた地方紅衛兵二百万と毛主席との会見の大集会は、なんとも形容のつかぬ大変な大集会となり、午後五時すぎ中止された。この大会は例によって深夜から歌をうたい毛主席万歳を叫びながら紅衛兵の大群が天安門広場と広場の東につづく大通り、さらに大通りにつながる道という道に集結をはじめた。
午前十時すぎ林彪副主席の演説が終ると同時に二百万の紅衛兵の大群は天安門前の広場に流れ込んで行進を開始した。
テレビで見ていても林彪副主席、周恩来首相、陳伯達中央文化革命小組組長らの様子はいったいどうなることやらという半ばあきらめと半ば焦りの有様が見えた。
毛主席は午後五時五分すぎ、二人の若い女性に付添われて天安門から姿を消し、大会は突然中止されることになつた。」
記事では党幹部の困惑の表情は伝えていますが、肝心の困惑の原因がよく分かりません。200万人が歌って町を練り歩くという程度の混乱なら、今年の北京では日常茶飯事でしょうし。紅衛兵が、何か党中央の思惑に反した行動をとったのでしょうか。
「金魚を食べないで 名物料理に坊や抗議 子供の楽園 滋賀水産センター」
(毎日新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「【大阪】「金魚がかわいそう。料理して食べないで」--- 三日、両親に連れられて滋賀県大津市の南郷水産センターに遊びに来た吹田市の小学生がこう訴えた。「かわいい金魚は見て楽しむもの」という子供の考えを無残に破る"商魂"が問題になっている。
この小学生は吹田市田口徹二さんの三男、恒夫君(一○)で、センター入口の「当センター名物、金魚料理」の大きな看板にびっくり。「金魚を食べるの。どうしてなの」と聞かれた父の徹二さんは、返事に困った。恒天君は三年のとき級友と教室で金魚を飼い、かわいがってきた。その金魚の仲間がみんなの目の前で料理され、食べられるなど考えてもみなかった。
同センターは五月一日、滋賀県が敷地の一部を無償で提供して開園した。観覧車などのほか、琵琶湖の淡水魚を集めた教育観賞池が九面あるため家族連れに人気があり、センター側も子供の"夢の楽園"として宣伝している。
金魚料理は同センター内の食堂「大黒屋」でやっている。料理はおもに和金。メニューには「金魚料理一式(二十センチ前後、二、三百グラム)千二百円から」とある。正田さんの話だと、センターを経営管理している県漁連から勧められ、十月一日から始めたという。
児重憲章にも「すべての児童は自然を愛しまた道徳的心情がつちかわれる」=同五条=とあるが、伊賀同センター場長は「センターの宣伝上、アイデアとしておもしろいと思って始めた。前にも好ましくないという声も聞いているが、食用に飼育しており、やめるつもりはない」といっている。
親がきっぱり教えればよい
児童心理学者
早川元二法大講師の話
金魚は食べられるかもしれないが、ふつうはそう考えない。イヌでもネコでも食べる国がある。しかし子供たちは幼児期に"おいしいもの"と"かわいがるもの"を大脳で分けて考える。金魚は"かわいがるもの"で"食べることはしない"と子供は考えているのだから、できれは食べたりしないほうがいい。しかしあまり神経質になるのもどうかと思う。"食べる人もあるかもしれないが、わたしはそういうことはしない"と親がいえばいい。
「情操教育を忘れた商魂」
"かわいい魚"のイメージ破るな
(中略)"げてもの食い”として有名な前大阪市立自然科学博物館長、筒井嘉隆氏も「子供がたくさん集まる場所で金魚を料理するとは、ひどすぎる。(中略)若者たちが白鶴をバーベキューにした事件があったが、それより残酷な感じを受ける」といっている。」
先日お伝えした、ノラ犬スキ焼きに続く悪食事件。食用に飼育している金魚なんだから、そんなに騒ぐことでもないような。早川元二さんの『しかしあまり神経質になるのもどうかと思う。"食べる人もあるかもしれないが、わたしはそういうことはしない"と親がいえばいい。』に賛成。この記事のトップに写真が掲載されているのですが、このキャプションに、『「金魚の刺身」と書かれた看板の前でうなだれる恒夫君(右から二人目)右端は父の徹二さん』とあります。記事にするために記者が親子をわざわざ再び大津の水産センターまで連れて行って、『恒夫君、ちょっとうなだれてみて』などと言って撮影したんでしょうか。
「大学祭 影ひそめる政治色 "模擬店"は大いばり」
(日本経済新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「大学祭のシーズンである。十月二十九日からは明治大学の駿台祭、日本女子大の目白祭が開かれたし、十一月中には東大教養学部の駒場祭はじめ、早大の早稲田祭、慶大の三田祭などがつぎつぎに開かれる。その催しから大学生の意識の一端をのぞいてみると、ことしは各大学祭とも"問題意識"に冨んだ企画がぐっと少なくなり、学生の象徴のような政治色の濃い統一テーマやアピールもほとんど影をひそめている。そして目立って多いのは喫茶店などの模擬店。「戦後二十年にして、はじめてでて来た傾向だ」と驚いている大学関係者も少なくない。
学生の多数が主張したいことを要約して示すのが大学祭の統一テーマやスローガンだが、ことしは意味のよくわからないテーマがあちこちに現われてきた。
同志社大では「ああ交響曲第五番現代」、明治大学では「猶予の季節」といったのが選はれた。同志社大の場合、テーマの候補のなかには「ビビレチンチン、セセリノナミダ」といった何語か不明のものや「空間の血笑」「負け犬に沈黙の死を」といった象徴詩まがいのものも多かった。
大学教授たちの話では、三、四年前までのテーマといえは安保条約反対をはっきり打ち出すか同条約論議にからんだものだった。また一咋年あたりは「憲法」の字句が織り込まれたものがかなりあった。咋年は日韓条約と毎年、それなりに共通した問題をとりあげていた。
ところがことしは早稲田祭に「ベトナム戦争の加担者日本帝国主義を弾劾(だんがい)せよ」とあるほか、政治色の濃いものは見当たらない。なにかを訴えるとしても「個人に思想を、世代に使命を」(三田祭)とか「肩を組もう未来を築く若い力」(立教祭)というように政治や社会に対してでなく、自分たち自身に向けたものがほとんど。
テーマが"非政治的"になった理由について大学祭の実行委員たちは「政治的な主張をかかげてはもうとても一般学生がついて米ないから」という。十月末、六大学の大学祭実行委員たちが立教大学に集まり「大学祭をどう進めるか」について議論したが、「必要単位は熱心にそろえるが、それ以外は楽しくという学生がふえすぎた。このため全学生共通のテーマには、自分たちのあり方を考え直そうというものか、表面的には意味不明のものしか採用できない」(駿台祭西田順志実行委員長の発言)と意見は一致した。」
政治の季節の終わりということなのでしょうか。しかし、同志社のテーマ候補の「ビビレチンチン、セセリノナミダ」は意味不明すぎ。
今日の殺伐
「「くやしい!!」娘さん三人 会社員が晴れ着にタバコ 天王寺公園」
(毎日新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「【大阪】「文化の日」の行楽でにぎわう三日午後の大阪天王寺公園で、中年の会社員が、若い女性三人の晴れ着のタモトにタバコの吸いさしを投げ入れ、天王寺署員に逮捕された。
午後二時四十分ごろ、大阪市天王寺区茶臼山町、天王寺公園東口付近で、大道手品を見ていた訪問着姿の若い女性三人づれのタモトにタバコの吸いさしを投げ入れている中年の男を岸和田市会社員、中村陽人さん(三一)の妻、テイ子さん(三○)が見つけた。
夫の陽人さんが約五十メートル離れた天王寺署公園東口派出所に急報、同署員が逮捕した。伊丹市会社員、S(四七)で、朝から酒を飲んだあと、公園に寄り「晴れ着姿の若い娘の驚く姿を見て楽しもう」とやったといっている。
Sは三十一年十月にも公然ワイセツ罪で警察に検挙されたことがある。また三十七年と三十九年に、精神異常で入院したことがある。家庭は妻と三児がある。
晴れ着にいたずらされたのは堺市家事手伝い、大北敏代さん(二四)ら高校時代の同級生で、三人とも着物のタモトに焼け穴ができ「にくらしい」とマユをつり上げていた。」
通報した夫婦のかたはエライですね。それにしても、愉快犯というのはいろんなところに愉快さを発見するモンですな。
「殺されていた娘さん 岐阜の誘かい コモ包みで発見 塗装工が犯行自供 "婚約者が犬をはねた" 車で帰宅直後連れ出す」
(日本経済新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「【羽島=岐阜県】十月三十日岐阜県羽島郡、岩井実さん(66)の二女、縫製工岩井久江さん(22)が誘かいされた事件の有力容疑者として、岐阜県警羽島署の捜査本部に二日逮捕され、取り調べを受けていた一宮市浅井町、塗装工村上又吉(25)は、三日午後九時二十分ごろ「金ほしさから久江さんを殺し、死体を愛知県葉栗郡木曽川町国鉄鉄橋下に隠した」と自供、捜査員が現場に急行、死体を発見した。捜査本部は、村上をわいせつ、誘かい容疑から誘かい、強盗、殺人、死体遺棄容疑に切り替え、引き続き取り調べている。最近の誘かい殺人事件ではさる九月八日、札幌市月寒(つきさむ)、山一建設会社社長遠山一郎さん(54)が"警察のもの"と名乗る二人の男に誘かいされ殺された事件がある。
調べによると、村上は、十月三十日午後十一時四十分ごろ、久江さんを誘い出し、各務原市神置町の木曽川堤防付近で乱暴したうえ鈍器ようのもので前額部を強打して殺し、近くにあったコモで死体を包み、乗ってきた軽四輪トラックで木曽川町神明町一七、国鉄東海道線木曽川鉄橋上り線の第一ピヤーから約十メートル上流の沈床の下に隠していた。
村上は、愛媛県西条市で生まれた。小学四年生で神戸に移り、三十一年三月、兵庫県尼崎市の鋼材会社に勤めたがすぐやめた。その後同地方に勢力をもつ暴力団の組員となり、神戸港で沖仲仕などをやっていた。友人や、近所の人の話だと、気が変わりやすく、ハッタリの強いいわば町のチンピラだったようだ。咋年十二月、暴力団の足をあらい、一宮市へきたが、間もなく同市内のねん糸工場でボイラーマンをしていた。ここも四カ月ばかりでやめ、塗装工をしていた。これまで窃盗、傷害などで八回逮捕されている。
"女子工員誘かい事件"は、十月三十日午後十一時四十分ごろ、岐阜県羽島郡、岩井実さん(66)の二女で、縫製工の久江さん(22)が、婚約者の会社員Mさん(26)とドライブから帰宅、その直後に発生した。
岩井さん方へ若い男が現われ「いま娘さんを送ってきた人の車が私の主人の犬をはねた。運転していた人の家を教えてほしい」といって、久江さんを連れ出し、軽四輪に乗せて去ったまま帰らなかった。そのさい家族も同乗する、といったが「車が小さいから……」と断わられた。
三十一日朝、ゆくえ不明の届け出を受けた岐阜県警羽島署は、結婚前の娘さんに迷惑がかかっては……と、極秘の捜査を進めたが、自宅から一・二キロ離れた各務原市神置町、木曽川堤防付近の草むらで久江さんのリボンを発見、現場の草むらが荒らされているうえ、男の足跡しかなかった---などから"誘かい"の線を打ち出し、翌一日から公開捜査に踏み切った。
その結果、犬をタネにした同様手口のきょうかつ未遂事件が十月二十日、隣接の愛知県一宮市で起きていることがわかった。この事件も女性が男友だちとドライブしたあと、軽四輪の男に「犬をひき殺した」と喫茶店に連れ込まれたもので、このとき男は"村上"と名乗っていたため、すぐ村上又吉を割り出し、二日朝から任意同行し追及した。
その後、(1)久江さんの両親が村上をを首実検して「犯人に間違いない」と証言した(2)草むらで発見されたリボンについていた頭髪は、久江さんと同じ血液型(B型)で、村上の車の助手席から出た頭髪とほぼ同じ---などの点から村上の犯行と断定し、同夜逮捕した。
村上は三十日の夜は魚釣りに行ったとアリバイを主張していたが、ついに自供したもの。」
堂々と被害者の家に乗り込んで連れ出すなどという手口からみて、真剣に犯行を隠蔽しようとしてなかったように見えます。こんな行き当たりばったりな犯罪に巻き込まれるなんて、悲惨としかいいようがありません。婚約者のMさんもつらいでしょうね。
夕刊の続報では、犯人が自殺を図ったとか。
「村上飛降り自殺図る 警察の二階で調べ中 誘かい殺人男」
(毎日新聞昭和41年11月4日夕刊11面)
「【羽島】岐阜県羽島郡、岩井実さん(六六)の二女、縫製工、久江さん(二二)を誘かいして殺し羽島署に逮捕された愛知県一宮市、塗装手伝い、前科八犯、村上又吉(二五)は四日午後零時十分ごろ、羽島署北側二階の調べ室で県警捜査一課の矢野警部補と田口巡査部長の二人から経歴を問いただされていたところ「自分のからだは自分で始末する」と突然立ち上がり、手錠をはめたまま頭を窓ガラスにぶっけて破り、飛び降り自殺しようとしたが二人が後ろから抱きかかえるようにして引きとめた。
村上はそれを振りきり、手錠をはめたままの手でほかの窓ガラスをたたき破り窓から飛び出そうとした。矢野警部補らは村上の腕と左足をつかんだが、体は外に出て宙づりとなった。約七メートルの窓の下はコンクリートで、騒ぎでかけつけた署員は当直室のフトンを持ち出し万一に備える一方、窓のすぐ下に出ている裏出入口の屋根にのぼり村上の右足をつかみ、さらにロープにしばって約五分後に部屋に引き戻した。村上は昼食のあと平静を取り戻したので部屋をかえて調べを続けた。
村上はいままでの調べに対し、金ほしさからやったと自供している。」
報道によると、この殺人事件以外にも誘拐未遂や殺人の余罪があるかもしれないとのこと。自供では『金目当て』といってますが、最初から性犯罪を狙っていたように思えますね。
「冬のカ 悩む世田谷、三鷹 浄化そう(簡易水洗)が温床に」
(読売新聞昭和41年11月4日朝刊1面)
「そろそろコタツの恋しくなる季節だが、世田谷区や三鷹市で、いまだにカに悩まされている地区がある。"犯人"は低温に強い「チカイエカ」。ひところ都心のビル街に大発生したやつだが、ここ数年簡易水洗便所の浄化そうを絶好の発生源として周辺地区でもブンブンとびはじめた。夏のカと同じように人を刺すうえ、これを恨絶しようとして浄化そうに薬をまけば、薬の影響で浄化機能が低下してしまい、退治のキメ手がない。都衛生局でもその対策には頭を痛めている。(中略)
このカは「チカイエカ」といって、夏にふつうに見られる「アカイエカ」の亜種で、アカイエカに似ているがやや大ぶり。戦争中はじめて東大構内で発見された。普通のカは気温が十六度以上になると活動するが、チカイエカは十度くらいでも吸血作用をする。」
世田谷区の赤堤や三鷹市の下連雀などでは、コタツにあたりながら蚊取り線香をたいたり、蚊帳をつっているそうな。季節感もなにもありませんです。
新聞斜め読み
「米ソ核独占に痛撃 「人民日報」中国核実験で論説 帝国主義に吉日はない」
(朝日新聞昭和41年11月4日朝刊3面)
「【ANS=東京】北京三日発新華社電によると、中国共産党機関紙「人民日報」は「ジョンソン、大きな不運に見舞われる」と題する次のような評論員の論文を掲載した。
一、中国のミサイル核兵器の発射実験の成功は、米ソ両核独占王に痛棒をくらわせ、かれらは打撃に気も転倒し、あっけにとられている。
一、ジョンソン大統領は、中国は「未開発世界」の「一部分」であり、中国は貧乏であり、核兵器を持つべきでなく、中国が核兵器を持つことは「かなしむべき」である、とのべた。世界人民は、中国というかつては帝国主義の眼中になかった貧しい、おくれた国家が、ひとたび徹底した解放をかちとれば、生活をよくすることができたばかりでなく、原子爆弾、ミサイルもつくることができ、科学技術の領域で世界の高峰に登り、西側の大国に追いつき、追越すことができることをはっきりと見てとっている。
一、ジョンソン大統領はまた、中国がミサイルと核兵器を持つことは「中国自体に危険を招く」、なぜなら米国は中国を「封じこめる」ことができるからである、とのべた。中国人民はアワと小銃しか持たなかった時代にも、米帝国主義を恐れはしなかったし、いまや中国人民みずからがミサイルと核兵器をにぎったのに、恐れることがあるだろうか。
一、ジョンソン大統例は、中国のミサイル核兵器の実験は、核拡散防止条約の調印に「大いに困難をふやした」と述べた。これは、まんざらあたっていなくもない。現在、米帝国主義とソ連修正主義指導部は、やっきとなって核拡散の取引を大いにすすめ、かれらの核独占の地位をかためようとしている。中国のミサイル核兵器発射実験の成功は、まさにこの両者の悪者に致命的な打撃を与えた。
一、ジョンソン大統領がアジアに来るさいに、米国務省は、かれのために暦を調べ、吉日を選んだ。思いもよらず、かれがアジアを「訪問」している途中で、中国のミサイル核兵器の発射にぶつかった。このことは、見たところ偶然の一致のようであるが、象徴的な意義を持っている。それは、われわれの時代には、帝国主義にとつていかなる黄道吉日もないということを明らかにしている。」
核ミサイル実験成功で意気上がる中共様の有難くも威勢のよいお言葉。『黄道吉日』なんて陰陽道の用語を使っているところが目を惹きます。占星術ならともかく、ジョンソン大統領が陰陽道に通じているとは思えませんが。
「毛主席退場で中止 北京の紅衛兵大集会」
(朝日新聞昭和41年11月4日朝刊3面)
「【北京=野上特派員三日発】三日北京で行われた地方紅衛兵二百万と毛主席との会見の大集会は、なんとも形容のつかぬ大変な大集会となり、午後五時すぎ中止された。この大会は例によって深夜から歌をうたい毛主席万歳を叫びながら紅衛兵の大群が天安門広場と広場の東につづく大通り、さらに大通りにつながる道という道に集結をはじめた。
午前十時すぎ林彪副主席の演説が終ると同時に二百万の紅衛兵の大群は天安門前の広場に流れ込んで行進を開始した。
テレビで見ていても林彪副主席、周恩来首相、陳伯達中央文化革命小組組長らの様子はいったいどうなることやらという半ばあきらめと半ば焦りの有様が見えた。
毛主席は午後五時五分すぎ、二人の若い女性に付添われて天安門から姿を消し、大会は突然中止されることになつた。」
記事では党幹部の困惑の表情は伝えていますが、肝心の困惑の原因がよく分かりません。200万人が歌って町を練り歩くという程度の混乱なら、今年の北京では日常茶飯事でしょうし。紅衛兵が、何か党中央の思惑に反した行動をとったのでしょうか。
「金魚を食べないで 名物料理に坊や抗議 子供の楽園 滋賀水産センター」
(毎日新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「【大阪】「金魚がかわいそう。料理して食べないで」--- 三日、両親に連れられて滋賀県大津市の南郷水産センターに遊びに来た吹田市の小学生がこう訴えた。「かわいい金魚は見て楽しむもの」という子供の考えを無残に破る"商魂"が問題になっている。
この小学生は吹田市田口徹二さんの三男、恒夫君(一○)で、センター入口の「当センター名物、金魚料理」の大きな看板にびっくり。「金魚を食べるの。どうしてなの」と聞かれた父の徹二さんは、返事に困った。恒天君は三年のとき級友と教室で金魚を飼い、かわいがってきた。その金魚の仲間がみんなの目の前で料理され、食べられるなど考えてもみなかった。
同センターは五月一日、滋賀県が敷地の一部を無償で提供して開園した。観覧車などのほか、琵琶湖の淡水魚を集めた教育観賞池が九面あるため家族連れに人気があり、センター側も子供の"夢の楽園"として宣伝している。
金魚料理は同センター内の食堂「大黒屋」でやっている。料理はおもに和金。メニューには「金魚料理一式(二十センチ前後、二、三百グラム)千二百円から」とある。正田さんの話だと、センターを経営管理している県漁連から勧められ、十月一日から始めたという。
児重憲章にも「すべての児童は自然を愛しまた道徳的心情がつちかわれる」=同五条=とあるが、伊賀同センター場長は「センターの宣伝上、アイデアとしておもしろいと思って始めた。前にも好ましくないという声も聞いているが、食用に飼育しており、やめるつもりはない」といっている。
親がきっぱり教えればよい
児童心理学者
早川元二法大講師の話
金魚は食べられるかもしれないが、ふつうはそう考えない。イヌでもネコでも食べる国がある。しかし子供たちは幼児期に"おいしいもの"と"かわいがるもの"を大脳で分けて考える。金魚は"かわいがるもの"で"食べることはしない"と子供は考えているのだから、できれは食べたりしないほうがいい。しかしあまり神経質になるのもどうかと思う。"食べる人もあるかもしれないが、わたしはそういうことはしない"と親がいえばいい。
「情操教育を忘れた商魂」
"かわいい魚"のイメージ破るな
(中略)"げてもの食い”として有名な前大阪市立自然科学博物館長、筒井嘉隆氏も「子供がたくさん集まる場所で金魚を料理するとは、ひどすぎる。(中略)若者たちが白鶴をバーベキューにした事件があったが、それより残酷な感じを受ける」といっている。」
先日お伝えした、ノラ犬スキ焼きに続く悪食事件。食用に飼育している金魚なんだから、そんなに騒ぐことでもないような。早川元二さんの『しかしあまり神経質になるのもどうかと思う。"食べる人もあるかもしれないが、わたしはそういうことはしない"と親がいえばいい。』に賛成。この記事のトップに写真が掲載されているのですが、このキャプションに、『「金魚の刺身」と書かれた看板の前でうなだれる恒夫君(右から二人目)右端は父の徹二さん』とあります。記事にするために記者が親子をわざわざ再び大津の水産センターまで連れて行って、『恒夫君、ちょっとうなだれてみて』などと言って撮影したんでしょうか。
「大学祭 影ひそめる政治色 "模擬店"は大いばり」
(日本経済新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「大学祭のシーズンである。十月二十九日からは明治大学の駿台祭、日本女子大の目白祭が開かれたし、十一月中には東大教養学部の駒場祭はじめ、早大の早稲田祭、慶大の三田祭などがつぎつぎに開かれる。その催しから大学生の意識の一端をのぞいてみると、ことしは各大学祭とも"問題意識"に冨んだ企画がぐっと少なくなり、学生の象徴のような政治色の濃い統一テーマやアピールもほとんど影をひそめている。そして目立って多いのは喫茶店などの模擬店。「戦後二十年にして、はじめてでて来た傾向だ」と驚いている大学関係者も少なくない。
学生の多数が主張したいことを要約して示すのが大学祭の統一テーマやスローガンだが、ことしは意味のよくわからないテーマがあちこちに現われてきた。
同志社大では「ああ交響曲第五番現代」、明治大学では「猶予の季節」といったのが選はれた。同志社大の場合、テーマの候補のなかには「ビビレチンチン、セセリノナミダ」といった何語か不明のものや「空間の血笑」「負け犬に沈黙の死を」といった象徴詩まがいのものも多かった。
大学教授たちの話では、三、四年前までのテーマといえは安保条約反対をはっきり打ち出すか同条約論議にからんだものだった。また一咋年あたりは「憲法」の字句が織り込まれたものがかなりあった。咋年は日韓条約と毎年、それなりに共通した問題をとりあげていた。
ところがことしは早稲田祭に「ベトナム戦争の加担者日本帝国主義を弾劾(だんがい)せよ」とあるほか、政治色の濃いものは見当たらない。なにかを訴えるとしても「個人に思想を、世代に使命を」(三田祭)とか「肩を組もう未来を築く若い力」(立教祭)というように政治や社会に対してでなく、自分たち自身に向けたものがほとんど。
テーマが"非政治的"になった理由について大学祭の実行委員たちは「政治的な主張をかかげてはもうとても一般学生がついて米ないから」という。十月末、六大学の大学祭実行委員たちが立教大学に集まり「大学祭をどう進めるか」について議論したが、「必要単位は熱心にそろえるが、それ以外は楽しくという学生がふえすぎた。このため全学生共通のテーマには、自分たちのあり方を考え直そうというものか、表面的には意味不明のものしか採用できない」(駿台祭西田順志実行委員長の発言)と意見は一致した。」
政治の季節の終わりということなのでしょうか。しかし、同志社のテーマ候補の「ビビレチンチン、セセリノナミダ」は意味不明すぎ。
今日の殺伐
「「くやしい!!」娘さん三人 会社員が晴れ着にタバコ 天王寺公園」
(毎日新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「【大阪】「文化の日」の行楽でにぎわう三日午後の大阪天王寺公園で、中年の会社員が、若い女性三人の晴れ着のタモトにタバコの吸いさしを投げ入れ、天王寺署員に逮捕された。
午後二時四十分ごろ、大阪市天王寺区茶臼山町、天王寺公園東口付近で、大道手品を見ていた訪問着姿の若い女性三人づれのタモトにタバコの吸いさしを投げ入れている中年の男を岸和田市会社員、中村陽人さん(三一)の妻、テイ子さん(三○)が見つけた。
夫の陽人さんが約五十メートル離れた天王寺署公園東口派出所に急報、同署員が逮捕した。伊丹市会社員、S(四七)で、朝から酒を飲んだあと、公園に寄り「晴れ着姿の若い娘の驚く姿を見て楽しもう」とやったといっている。
Sは三十一年十月にも公然ワイセツ罪で警察に検挙されたことがある。また三十七年と三十九年に、精神異常で入院したことがある。家庭は妻と三児がある。
晴れ着にいたずらされたのは堺市家事手伝い、大北敏代さん(二四)ら高校時代の同級生で、三人とも着物のタモトに焼け穴ができ「にくらしい」とマユをつり上げていた。」
通報した夫婦のかたはエライですね。それにしても、愉快犯というのはいろんなところに愉快さを発見するモンですな。
「殺されていた娘さん 岐阜の誘かい コモ包みで発見 塗装工が犯行自供 "婚約者が犬をはねた" 車で帰宅直後連れ出す」
(日本経済新聞昭和41年11月4日朝刊15面)
「【羽島=岐阜県】十月三十日岐阜県羽島郡、岩井実さん(66)の二女、縫製工岩井久江さん(22)が誘かいされた事件の有力容疑者として、岐阜県警羽島署の捜査本部に二日逮捕され、取り調べを受けていた一宮市浅井町、塗装工村上又吉(25)は、三日午後九時二十分ごろ「金ほしさから久江さんを殺し、死体を愛知県葉栗郡木曽川町国鉄鉄橋下に隠した」と自供、捜査員が現場に急行、死体を発見した。捜査本部は、村上をわいせつ、誘かい容疑から誘かい、強盗、殺人、死体遺棄容疑に切り替え、引き続き取り調べている。最近の誘かい殺人事件ではさる九月八日、札幌市月寒(つきさむ)、山一建設会社社長遠山一郎さん(54)が"警察のもの"と名乗る二人の男に誘かいされ殺された事件がある。
調べによると、村上は、十月三十日午後十一時四十分ごろ、久江さんを誘い出し、各務原市神置町の木曽川堤防付近で乱暴したうえ鈍器ようのもので前額部を強打して殺し、近くにあったコモで死体を包み、乗ってきた軽四輪トラックで木曽川町神明町一七、国鉄東海道線木曽川鉄橋上り線の第一ピヤーから約十メートル上流の沈床の下に隠していた。
村上は、愛媛県西条市で生まれた。小学四年生で神戸に移り、三十一年三月、兵庫県尼崎市の鋼材会社に勤めたがすぐやめた。その後同地方に勢力をもつ暴力団の組員となり、神戸港で沖仲仕などをやっていた。友人や、近所の人の話だと、気が変わりやすく、ハッタリの強いいわば町のチンピラだったようだ。咋年十二月、暴力団の足をあらい、一宮市へきたが、間もなく同市内のねん糸工場でボイラーマンをしていた。ここも四カ月ばかりでやめ、塗装工をしていた。これまで窃盗、傷害などで八回逮捕されている。
"女子工員誘かい事件"は、十月三十日午後十一時四十分ごろ、岐阜県羽島郡、岩井実さん(66)の二女で、縫製工の久江さん(22)が、婚約者の会社員Mさん(26)とドライブから帰宅、その直後に発生した。
岩井さん方へ若い男が現われ「いま娘さんを送ってきた人の車が私の主人の犬をはねた。運転していた人の家を教えてほしい」といって、久江さんを連れ出し、軽四輪に乗せて去ったまま帰らなかった。そのさい家族も同乗する、といったが「車が小さいから……」と断わられた。
三十一日朝、ゆくえ不明の届け出を受けた岐阜県警羽島署は、結婚前の娘さんに迷惑がかかっては……と、極秘の捜査を進めたが、自宅から一・二キロ離れた各務原市神置町、木曽川堤防付近の草むらで久江さんのリボンを発見、現場の草むらが荒らされているうえ、男の足跡しかなかった---などから"誘かい"の線を打ち出し、翌一日から公開捜査に踏み切った。
その結果、犬をタネにした同様手口のきょうかつ未遂事件が十月二十日、隣接の愛知県一宮市で起きていることがわかった。この事件も女性が男友だちとドライブしたあと、軽四輪の男に「犬をひき殺した」と喫茶店に連れ込まれたもので、このとき男は"村上"と名乗っていたため、すぐ村上又吉を割り出し、二日朝から任意同行し追及した。
その後、(1)久江さんの両親が村上をを首実検して「犯人に間違いない」と証言した(2)草むらで発見されたリボンについていた頭髪は、久江さんと同じ血液型(B型)で、村上の車の助手席から出た頭髪とほぼ同じ---などの点から村上の犯行と断定し、同夜逮捕した。
村上は三十日の夜は魚釣りに行ったとアリバイを主張していたが、ついに自供したもの。」
堂々と被害者の家に乗り込んで連れ出すなどという手口からみて、真剣に犯行を隠蔽しようとしてなかったように見えます。こんな行き当たりばったりな犯罪に巻き込まれるなんて、悲惨としかいいようがありません。婚約者のMさんもつらいでしょうね。
夕刊の続報では、犯人が自殺を図ったとか。
「村上飛降り自殺図る 警察の二階で調べ中 誘かい殺人男」
(毎日新聞昭和41年11月4日夕刊11面)
「【羽島】岐阜県羽島郡、岩井実さん(六六)の二女、縫製工、久江さん(二二)を誘かいして殺し羽島署に逮捕された愛知県一宮市、塗装手伝い、前科八犯、村上又吉(二五)は四日午後零時十分ごろ、羽島署北側二階の調べ室で県警捜査一課の矢野警部補と田口巡査部長の二人から経歴を問いただされていたところ「自分のからだは自分で始末する」と突然立ち上がり、手錠をはめたまま頭を窓ガラスにぶっけて破り、飛び降り自殺しようとしたが二人が後ろから抱きかかえるようにして引きとめた。
村上はそれを振りきり、手錠をはめたままの手でほかの窓ガラスをたたき破り窓から飛び出そうとした。矢野警部補らは村上の腕と左足をつかんだが、体は外に出て宙づりとなった。約七メートルの窓の下はコンクリートで、騒ぎでかけつけた署員は当直室のフトンを持ち出し万一に備える一方、窓のすぐ下に出ている裏出入口の屋根にのぼり村上の右足をつかみ、さらにロープにしばって約五分後に部屋に引き戻した。村上は昼食のあと平静を取り戻したので部屋をかえて調べを続けた。
村上はいままでの調べに対し、金ほしさからやったと自供している。」
報道によると、この殺人事件以外にも誘拐未遂や殺人の余罪があるかもしれないとのこと。自供では『金目当て』といってますが、最初から性犯罪を狙っていたように思えますね。